2011/05/06

声の力


当初、この企画は4月24日(日)に行うつもりでいました。
内容も、子どもから大人まで楽しめるコミカルでちょっと不思議な童話をいくつか、ということで進んでいました。
3月11日に、あの地震が起きる前までは。

あの地震の前と後では、誰もが多かれ少なかれ何かしら世界の見え方が変わったのではないかと思います。

のびのび荘に作品を置いてくださる作り手の方々の中にも、しばらくは制作も手につかなかったという方もいました。何ともいえない無力感や罪悪感をかかえこんでしまったり、自分の価値観の大きすぎる変化に当の本人がついていけず立ち尽くした方もいたことでしょう。
私も、結構長いことボーっとしちゃった。
朗唱家の鈴木泉さんもまたそうだったようです。

 3月11日以来「私のしている朗唱なんて誰かの空腹を満たせないし、身体をあたためることもできない。何の役にも立たないんだ!」という罪悪感と、私の大好きな故郷、福島県いわき市の現在と行く末への不安で、私は憂鬱な日々を送っていました。
 ところが4月に入り桜の花に誘われたのか、じっとはしていられない思いが胸の奥から湧いてくるのを感じました。
 そして、「あなたの声を聞いていると心も身体もあたたかくなって気持ちが良い」「泉の朗唱には何か力がある」と以前に何人かの人が言ってくれたことを思い出し、勇気をもって朗唱家としてもう一歩前に踏み出すことにしました。
 日常生活の役には立たないかもしれません。でも、私の声と言葉に祈りをこめて伝えたい!聴いてくれる人がたった一人であっても! 「せっかく生まれてきたのだから、どんなことがあっても生きぬきましょうよ!」と。
(朗唱家 鈴木泉)

泉さんの普段話す声は、包み込むようなあたたかくてやさしい声です。
ひとたび語り始めれば、その声が、時に激しく、やわらかく 、空間をかたちづくります。
今回の演目のひとつ、サミュエル・ベケットの「私じゃない」は、正直軽やかで楽しいといったものではありません。難解・・・だと思います。子どもだったら泣くかもね。
それでもグイグイと引き込まれるし、語りによってつくりだされる空間のなんともいえない緊張感をビリビリ感じるのは不思議といやなものではないのです。

癒すなんてそんなたいそうなことはできないけれど、誰かに寄り添うことなら、もしかしたらできるかもしれない・・・。そんな風にも泉さんは言っていました。

寄り添うような声の力、ぜひ、たくさんの方に聴いて感じてもらいたいと思います。


鈴木泉ひとり語り① 声の力
 サミュエル・ベケット 「私じゃない」
 宮沢賢治 「雁の童子」  他

2011年5月22日(日)
14時開場 / 14時半開演
席料:1500円(のびのびお買い物券300円分つき)
お席のご予約は・・・
nobinobisou☆gmail.com(☆を@にかえてください)または店頭まで。

0 件のコメント:

コメントを投稿